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武装神姫…今現在爆発的なブームを誇り、その老若男女を問わない人気は旧世紀の ヒット商品、ポケモンや遊戯王カードもかくや。いや、それ以上であろう。 かく言うオレ──日暮 夏彦も、もはや社会現象とさえ言えるそのヒット商品の恩恵に 与ってる一人だ。 「おし、掃き掃除終了…っとぉ」 ゆっくりと伸びをして、目の前の看板を見上げる。 「ホビーショップ エルゴ」三年前に親父の模型屋を改装して始めたオレの城だ。 玩具オタが高じて工学部に通った身の上としては、そのスキルを存分に活用出来る天職。 特に神姫関係には力を入れてて、販売、登録、修理、カスタマイズやオリジナルパーツ の製作まで何でも御座れだ。 そんなに大きな設備じゃないがバトルサービス用の筐体も借金して導入済み、 公式ショップにも登録してある。 そんな努力の甲斐もあってか商売としてはそこそこ快調。 近所の神姫ユーザーには結構支持されてるし、健全経営とは言えないが俺一人 生きていくには問題ない収入がある。 それに…ウチには他の店には無いウリがもう一つあるのだ。 「みなさん、家に帰るまでが学校とはよく言った物。無事にお家に帰る事は当たり前に 見えて大切な事です」 「特に、小さなマスターを持つ神姫はまだまだ充分な注意力を持たないマスターに 代わり、その安全を守る事も大切なお仕事です」 「ですから、マスターと逸れない様にして、しっかりお家に帰りましょうね」 『はーい!うさ大明神様ー!!』 自動ドアを開けて店内に戻る俺の耳に、凛とした女性の声と大勢の少女の声が響いた。 そして、大小さまざまなご主人様に連れられて神姫達が帰っていく。 「毎度ありがとう御座いましたー!」 愛想よくすれ違いに店外へ出て行く客に声を掛け、店内へ戻る。 「よ、御疲れ。大明神様」 声を掛けるのは店内に設えた1/12の教室、その教壇に設えられたハコ馬にのる胸像へ 向けてだ。 「マスター…貴方までその名で呼ぶのは止めて下さい」 非難がましく返事を返すその胸像こそがオレの神姫ジェニー。 所謂ヴァッフェバニータイプってヤツだ。 元々強化パーツとして販売されたこのタイプには素体が付いていない。 その代わりにディスプレイ目的の胸像パーツが付いてたのだが、 ある理由から素体の都合がつかなかったオレが間に合わせにその胸像パーツを チョチョイと改造してボディ代わりに使ってるのがコイツってワケだ。 その姿は旧世紀のバラエティで定番だった銅像コントのあのお方の如し。 その威容をして生徒達からは「ウサ大明神様」の名で親しまれている。 いや、子供の発想力ってのは素晴らしい。ソレが人間でも神姫でも。 っと、説明が前後した。ウチの他に無いウリってのはつまり…この神姫の学校だ。 事の起こりはオレがまだ学生の頃、バイトで塾講師をしていた頃に遡る。 当時塾では生徒の神姫持ち込みを禁止してたのだが、子供がそんな事守るワケもなく それなりに問題になっていた。 で、何をトチ狂ったか塾の方針として勉強中は神姫を預かり、 神姫にも人間社会について勉強を教える。なんて事になってしまったのだ。 そんでもって、白羽の矢が立ったのが既に塾講師内にも玩具オタが知れ渡っていた俺。 …ヨド○シに開店ダッシュは未だに若気の至りだったと思う。 あれさえ目撃されなければ。 とりあえず俺を呼び出した時の塾長の台詞「どうせ持ってるんでしょ?神姫」はかなり トサカに来た事を覚えている。 しかも確かあの時、あの親父は半笑いだった。畜生。 って、それは置いといて。 結局、俺と俺の神姫…ヴァッフェバニーのジェニーは神姫担当教師としてバイトを 辞めるまでの間、しこたま働かされたワケだ。 店を継いだ頃、まだ客足の少ない店への呼び水としてジェニーがもう一度教室を やったらどうかと提案して来た時は少し渋ったが、やってみれば事のほか評判も良く、 実際ウチの店を知って貰ういい切っ掛けになった。 多分オレ一人ではこうはいかなかったろう。 いや、実際腕さえ良ければなんとかなると思ってた俺としては、ジェニーへの感謝は してもしきれない。 「なら、新しい素体買って下さいよ」 「いや、大明神様が居なくなったら純真な子供達の夢が壊れるだろ?」 心を読んだかのようなジェニーの呟きに、即座に返す。なんかブツブツ言ってるけど メンドいので脳内スルー。 「さ、仕事仕事ー」 今日中にカスタマイズせにゃならん神姫が3体。いつまでも遊んでは居られんワケで。 大人は大変なのよ。 「今日も一日、良く働いたねー」 大きく伸びをして時計を見れば時間は午後8:56分。そろそろ閉店時間だ。 そんな平穏を破り、ドタバタと足音を響かせて客が店に転がり込んで来た。 文字通り、転がるように慌てて。 「すいません、まだやってますかっ!?」 …うん、もうしばらくは閉められそうにねぇや。 やって来た客は高校生ぐらいか? 話を聞けば彼のストラーフ「コラン」があるバトルを境にまったく動かなく なったという。 どのショップ、果てはメーカーに問い合わせてもどこにもハードの故障は無く、 プログラムだけがごっそりと無くなっているのだそうだ。 故障として新しいプログラムのインストールを推奨されたが、それはもはや彼の神姫 とは別の物になるという事。 彼はなんとか自分の神姫を救うべく、藁にもすがる思いでウチの評判を頼みに 尋ねて来たのだそうだ。 「少年、キミが最後にやったバトルってのはどんなバトルだったんだ?多分、原因は ソレだぜ」 さっきから、何度もした問い掛けを繰り返す。 この話になると歯切れが悪くなるのは…何だかな、察しは着くが。 「別にオレはメーカーの人間でも警察でもない。例えば…キミが非合法のバトルを やっててもソレで修理を断ったりはしない」 カマを掛けてみる。見る見る青ざめていく少年の顔が、複雑に表情を変えた。 「…ごめんなさいっ!」 開口一番大声で謝り、俯く少年。その肩を叩いて宥める。 ま、バトル派の神姫ユーザーにゃ意外とあるケースだ。 「僕…結構リーグでいいとこまで行ってて…自分の実力を確かめたくて… アンダーグラウンドのバトルに参加したんです」 「…その、最近パーツとかの遣り繰りに困ってて、賞金が欲しかったていうのは あるんですけど…」 申し訳無さそうに少しづつ言葉を絞る少年。頷き、黙って話しを聞く。 「…でも、こんな事を望んでたワケじゃない…バトルは勝ちました、賞金も出ました。 でも、僕のストラーフ…コランが帰って来ない…それじゃ意味が無いんです! 彼女が居ないと…何で…どうしてこんな事に…」 少年の肩が小刻みに震えている。…経緯はどうあれ、自分の神姫の為に泣ける…か。 「少年、そのバトルの参加方法とか解るか?」 「ネットワークのバーチャルバトルです。不具合を調べる時に、関係有るかと思って ログはとってます…」 「でも、そのサイト何時の間にか消えてて…裏バトルだから当たり前なんですけど…」 ログがあるなら話は早い。 「…そのログ貸してくれ。オレが必ず君のストラーフ──コランを直してやるから」 少年が目を見開いてこちらを見る。慌てて鞄からメモリーカードを取り出し。 「このカードに入ってます。あの…お願いしますっ!」 土下座せんばかりの勢いで頭を下げる少年に頷き、もう遅いからという理由で 今日のところは帰した。さて… PCのモニター上をとんでもない速さで流れていく文字の羅列を見ながら、嘆息する。 オレもそこそこやれるつもりなんだが…やっぱコンピュータ自身にゃ勝てんな。 …オレはオレの仕事しよう。携帯電話を取り出し、コールする。 「はい。KMEE神姫バトルサービスサポートセンターで御座います」 受付嬢の柔らかくも清潔感溢れる声が電話の向こうから響く。 いや、何を緊張してるのかオレ。 「あ、私日暮と申しますが。今米主幹いらっしゃいますか?」 「今米で御座いますね?少々お待ち下さい」 おお、良かった。不審がられたらどうしようかと思ったよ。 「もしもし?今米だ。お前か日暮?」 受話器から聞こえるゴツくてかつ加齢臭溢れる声に現実の無常さを感じる。 「うす、今米さん。今なんかトラブってる?神姫強奪事件とか」 「神姫狩りの事か?そりゃ困ってるが…今に始まった事じゃないだろ。 こっち側が噛んでるケースもあるしなぁ」 「いやいや、そういう必要悪じゃなくて。もっとどうしようもねーの」 歯切れの悪い答えを返す今米さんにさらに突っ込む。本気だかはぐらかしてんのか 読みにくいんだよなぁ、この人。 「まぁ、神姫絡みの犯罪やトラブルってのは悲しいかな右肩上がりだからな。しぼれんよ」 「ええと、一見故障じゃないんだけどデータだけごっそり無くなるってヤツなんだけど?」 受話器の向こうからキーボードを叩く音がする。 調べ始めて十数秒ほどか、返事が返って来た。 「ちょっと待て…それならカスタマーやウチを含めて18件来てる。何か掴んだのか?」 お、ビンゴ。 「ああ。ウチの客が被害にあった。今夜辺りなんとかするつもり」 「そうかそうか。そりゃいい、宜しく」 「で、いくら出す?」 「おい待て!?どうせウチとは関係なくやるんだろ?何で身銭切らなきゃならんのだ」 ちぃ、やっぱそう来るか。進歩ねぇな、オレも今米さんも。 「データ、そっちでサルベージした事にしたら評判上がるんじゃねーの? 企業イメージって大事よ、このご時勢」 「む…そりゃそうだが…しかしなぁ」 「どうせこれからたっちゃんに頼むし。嫌なら別にいいけど」 たっちゃんてのは古馴染みの警部さんだ。神姫関連犯罪の担当で色々と世話したり されたりのまぁ、腐れ縁である。 「あー、わかったわかった!そのかわりデータは大丈夫だろうな?」 「任せとけよ。んじゃ、報酬ヨロ」 電話を切る。おっしゃ。これで年末商戦向けの仕入れ費用は何とかなりそうだ。 「ジェニー、どうだ?」 アクセスログから例の違法バトルのサーバを探しているジェニーに声を掛ける。 「見つけてます。ウラも取れそうですよ」 「さっすが。しかし、人の神姫…しかもパーツじゃなくてデータだけなんてな」 「強力なランカー神姫だけ狙うってんならともかく、ランダムだろ?どうすんだか」 溜息混じりにジェニーが答える。 「他人の持ち物を所有したいなんて有り触れた願望だと思いますよ? 肥大した支配欲…とでも言えば的確ですかね」 「そういう向きに高額で販売する…愛玩用のボディにでも入れて。そんなトコでしょう」 冷静に説明してみせるその姿は一見クールだが…解る。 怒ってる、怒ってるよジェニーさん。 「ヘドが出るな」 ま…気分悪いのはオレも同じなんだが。 「準備、出来ているならそろそろ行きませんか?」 「まー待て、連中の潜伏先をたっちゃんに流す」 「猶予は…今23時か。2時間でいいな?」 「充分です」 力強く頷くジェニーに頷き返し、準備を始める。さぁ、久しぶりの副業だ。 >頭部パーツを複合レーダーユニットに換装。マルチバイザー装着。 >コアユニットパージ。メインボディに接続... >ヴァッフェバニーtypeE.S 「Genesis」起動..._ モニターに映し出される文字が彼女の目覚めを告げる。 オレの武装神姫。 Encount Strikerの名を持つカスタムヴァッフェバニー、ジェネシスが。 E.S…遭遇戦域対応を目的とした銀の可変アーマー「シャドウムーン」と背中の複合兵装 「ブラックサン」大型装備は背部ブースターから伸びるフレキシブルアームで全て接続。 移動は全てフライトユニットで行い、状況によって装備位置の変更、可変によりあらゆる 戦況に対応する特別仕様機。 全身フルカスタマイズ、武装も全てオレが玩具コレクションから厳選して改造した ワンオフ品。 本来のレギュレーションを逸脱したその姿はもはや公式戦に参加する事も適わない、 戦う為の神姫。 だが、俺達には必要な力だ。 そうオレとコイツ…「正義の味方」には。 ジェネシスをPCと接続し、ネットワークにダイブ。彼女の眼を介して広がる電脳世界を 駆け抜けていく。 意識を集中し、一心不乱にキーボードを叩くこと数分。例のサーバーに到着した。 情報を偽装しセキュリティホールを開けて侵入を開始。違法バトルのシステムに侵入。 公開ユーザー名には「G」とだけ入れる。コイツがオレの通り名だ。 「ジェニー…いや、ジェネシス。もうすぐ入り口が開く。今回のミッションはサーバーに 侵入後、軟禁状態の神姫を解放。オレの開けたセキュリティホールを経由して転送される 彼女達の護衛だ。行けるな?」 「了解」 「よし。ミッションカウントスタート!状況開始だぜ、相棒」 電脳世界とはいえ…その住人から見れば、往往にして実体を備える世界を形成して 見える。 サーバー内に広がる風景は鬱蒼と茂る森と光を遮る曇天。そして、その中心に聳える 重苦しい、監獄の様な屋敷のみ。 「雰囲気出してんなぁー…」 感心半分呆れ半分、呟く俺。 「マスター、索敵範囲に神姫一体。斥候でしょうか?」 「ちっ…調べられるか?」 「向こうにも気付かれました。近い…マシーンズ反応有り。波形からマオチャオタイプと 推察します。迎撃許可を」 「許可。マシーンズ撃退後本体は捕縛だ」「了解」 ブラックサンに積んだストフリ流用のドラグーンシステムが分離し、マシーンズを正確に 捉える。 相手の反応はまだ無い。レーダー反応精度はこちらが上か。 一度きりの発射音の後、ばたばたと倒れて目を回す、ぷちマスィーンズ。 「にゃにゃっ!?」 茂みから聞こえるその声に、指示を出すより早くジェネシスが反応した。 「其処ですか!」 腕部に装備したアムドラネオダークさん流用のワイヤークローデバイスがマオチャオを 掴み上げ、天高く引き上げる。 おー…猫の一本釣り。 「ひぃやぁーっ!?た、助けて欲しいのにゃー!リィリィお家に帰りたいのにゃー!」 ん?コイツ攫われた神姫か? ワイヤーを巻き取ったジェネシスが衝撃で跳ね上がるマオチャオ…リィリィだっけか。 …を抱き止めた。 「大丈夫。恐くないから…良く頑張ったわね?」 一瞬で柔らかい雰囲気を作り、リィリィの頭を撫でて優しく接する。慣れてるな大明神。 「ふえ?おねーさん…ダレにゃ?」 きょとんとした顔のまま尋ねるリィリィに、オレとジェネシスはここぞとばかりに 不敵に答えた。 『正義の味方…って事で』 「では、あの屋敷に皆捕らわれて居るんですね?」 「そうにゃ、バトル終わったのにリィリィ達ばとるふぃーるどから出られないのにゃ。 そしたらカタクてゴツイのがいっぱい出てきてみんなを捕まえて連れてったにゃ」 リィリィが俺達を案内しながら経緯を説明する。思い出してしまったのか元気がなく、 その声も悲しげだ。 「大丈夫…絶対に助けます」 決意のこもったジェネシスの声。固いヤツだと普段は思うが、こういう実直さは 誇らしくもある。 「はいにゃ…」 嬉しそうに微笑むリィリィの声が、オレの決意も新たにする。 その時だった。前方の地面が唐突に盛り上がる。いや、捕縛者…そいつらが現れたのだ。 「で、出たにゃ!アイツらにゃ!」 慌てふためくリィリィ。とりあえす置いといてそのプログラムを解析する。 神姫と思しき特長は無い。 「捕縛プログラムだな…改造してあるみたいだが、ベースはブロックウェアだ。 多分、特徴も見た目通り」 「つまり…硬い代わりに動きは遅いと」 ブラックサンを前方に構え、トリガーロックを解放する。 前方が展開しメガキャノンモードへ。 「シュート!」 ジェネシスの掛け声と共に放たれたビームの一撃が、一挙に二体を薙ぎ払う。 しかし、安心した瞬間今度はサイドから捕縛者が現れた。 潜行して距離を詰めたか、近い。 「おねーさん、遠距離攻撃型にゃ!?早く逃げるにゃ!」 リィリィが逃げる隙を作ろうとその爪を構える。 「心配後無用」 手品師の様な口調で呟くと、ジェネシスがモードを切り替える。 ブラックサンのサイドのビーム発振機から伸びるビームが重なり、繋がり… 巨大なビーム刃を形成する。 機構はフルスクラッチだが原理はムラマサブラスターと同じだ。 読んでて良かった、クロボン。 体ごと振り回すその巨大な刃に切り裂かれ、さらに周囲を囲んだ4体が破壊される。 「す…すごいにゃぁ…」 リィリィも呆気に取られるばかりだ。いや、ムリもないけど。厨装備でゴメン。 その後も散発的に敵は現れたが、特に問題になる様な事も無く屋敷まであと一歩と いうところまで辿り着いた。 ふと、暫く黙り込んでいたリィリィが口を開く。 「おねーさんのその装備は、どこで買ったのにゃ?」 「いえ、これは全てマスターのお手製なんですよ」 一瞬きょとんとした表情を浮かべるも、微笑みながら答える。 「そうなのにゃ…残念にゃ。リィリィも強力な装備さえあれば皆を助けて… あんなヤツらに負けないにゃ…」 「あ、そうだ!マスターさん、リィリィにも装備を作って下さいにゃ! 装備があれば負けないのにゃ!」 一瞬しょんぼりしつつも、すぐに持ち直したリィリィがなんとこちらに話しを 振ってくる。 ううむ…なんと答えたモンか。 「リィリィさん…それは違います」 オレが悩んで居るうちに、ジェネシスが会話に割って入る。 「装備は、神姫を助けてくれます。でも、神姫を強くしてはくれません。決して」 「そんな事ないにゃ!強いパーツを持ってる神姫は強いにゃ!」 「おねーさんは強いパーツを持ってるから解らないんだにゃ!」 「リィリィさん…」 諭すようなジェネシスの言葉に強く反論するリィリィ。 ジェネシスは悲しそうな瞳でリィリィを見詰めるのみ。 …やれやれ。 「リィリィちゃん、例えばマシーンズが今の3倍の数使えるとしたらどうかな? それは強い?」 「3倍!?それはきっと強いにゃ!でもひぃ、ふぅ、みぃ、はにゃ…混乱するにゃ~」 マシーンズの様な、遠隔操作を要する自律兵器を統率する事は簡単そうに見えて 実は非常に複雑なのだ。 一説にはその制御にリソースを食われてマオチャオシリーズはAI的に幼いなんて説も… いや、それは置いといて。 「ジェネシスはドラグーン6基、クローデバイス2基、フレキシブルアームが5本… コレらすべてを常時コントロールしなきゃいけない。腕が15本あるようなモンかな」 「じっ…じゅうごほん~…こんがらがるにゃあ~」 目を回すリィリィに多少は場の空気が和んだのを感じ、続ける。 「ジェネシスだって最初からこの装備を扱えたワケじゃない」 「というか、この装備自体が改良に改良を重ねて作り上げていった物だから、その過程 で身につけていったって所かな」 一拍置いて言葉を続ける。 「いいかい、リィリィちゃん。強力な武器を持つ神姫が強いんじゃない。 武器を使いこなしその性能を引き出せる神姫が強いんだ」 「今までだって、そんな神姫をリィリィちゃんも見てきた筈だ」 しばらく考えたリィリィが、おずおずと口を開く。 「じゃあ…リィリィも強くなれるかにゃ?おねーさんみたいに…」 「なれるさ。先ずは、一つの武器を極める。誰にも負けないぞってぐらい、その武器の 使い方を身につけるんだ」 リィリィが頷くのをモニタ越しに確認して、続ける。 「そしたら、次はその武器を生かせるような他の武器を選ぶんだ。組み合わせは いっぱいある。そうやって、武器を、戦い方をどんどん身につければ、どんどん 出来る事が増えていく。昨日は出来なかった事が出来るようになる」 「昨日より今日より明日。装備なんか無くたって、そんなリィリィちゃんはずっと 強いんじゃないかな?」 「昨日より…強いアタシ…」 ぱぁ、とリィリィに明るい笑顔が広がる。 「頑張るのにゃ!リィリィ頑張るのにゃ!」 「強い武器がなくたってリィリィは強くなれるのにゃ、皆を守れるにゃー!」 元気に飛び跳ねるリィリィ。自分の可能性に気付いたその表情は明るい。やれやれ。 「マスター…良い話しますね、偶に」 黙って聞いていたジェネシスが、誇らしげに微笑んでいる。 うわ。またやっちまった。オレ、凄い恥ずかしい事言ったよな今? 「いや、アレだ!好きなヒーロー物の受け売りだよ!? ほらヒーロー物はやっぱ人生のバイブルだろ!?」 やけっぱちで弁解する。あー、すっげぇ恥ずかしくなってきた。 「はいはい…」 ジェネシスのこちらを見て笑うその瞳が優しい。やめろ、オレをそんな暖かい目で見るな。 誰かオレを埋めろ。 「では…明日へ希望を繋ぐ為に、行きましょう!」 ジェネシスの呼びかけに屋敷の方を見る。屋敷は既にその威容を目の前に現していた。 薄暗い雑居ビルの一室、サーバー一台とPCが三台並ぶだけの殺風景な室内。 PCにはそれぞれ男達が張り付いてなにやら作業を行なっている。 その表情を一言で言えば…焦燥感。 「どうだ、神姫共は全員捕まえたか?」 ドアを開け、やさぐれた風貌の男が入ってくる。作業していた一人が慌てて腰を上げ。 「ア、アニキッ!それどころじゃねぇんですよ。見覚えの無い神姫が何時の間にか居て、 捕縛プログラムをどんどんブッ壊してるんですよ!」 「ああ?そういうのは登録の時に入れない設定になってるって、ブローカーが言ってた だろうが!テメェ、掴まされやがったな!?」 「ひっ!?いや、そんな事ねぇですよ!コイツ、昨日はいませんでしたって!」 「外から入ったってのか!?アレか、ハッカーってヤツか?どんなヤロウだ」 画面内を駆け回るのは銀色の神姫。アニキと呼ばれる男はユーザー情報を閲覧する。 >Type:WAFFEBUNNY >Name:Genesis >User:G 「…Gだと!?こいつ…あのGか!?って事はコレがウワサのE.Sか!?畜生!!」 「アニキ、コイツ何なんです?」 モニターとアニキと呼ばれるおそらく主犯の男とを交互に見詰める男。 「神姫犯罪が流行りだした頃、どっからともかく現れた自警団気取りのイカレ野郎だよ。 ブローカーから聞いた事がある」 唸るように低く呟く男は、続ける。 「コイツに目をつけられたヤツは必ずヒドイ目に合ったそうだ。神姫にしても コンピュータにしても、とんでもねぇ腕をしてていくつもの連中が被害にあってるって 話でな。神姫犯罪を嗅ぎ付けちゃ、幽霊みたいに現れるって話だ」 男達が話している間にも、銀のヴァッフェバニーは次々とプログラムを破壊していく。 「場合によっちゃタイプ名の後にE.Sって名前がついててな。なんちゃらストライクだか そんな名前だとよ」 「どういう意味か聞いたらよ、その中国人ブローカー漢字で見敵必殺と書きやがった。 笑えねぇ」 舌打ちし、憎々しげにモニターを見詰めて叫ぶ。 「おい、サーバー操作してとっととコイツを弾き出せ!」 「それが、さっきからやってんですけどサーバーをコントロール出来ねぇんですよ!」 「ああっ、畜生!」 部下の男の悲鳴に近い報告を聞き、主犯の男は近くの椅子を力任せに蹴り飛ばす。 追い出せないなら…後は潰すしかない。このままじゃ折角の儲け話がパーだ。 「くそ、こうなったらオレがあのGをブッ殺してやらぁ!例の神姫、使えるな!?」 「あ、へい!言われたとおりにやっときました!」 「よっしゃ…裏稼業でも音に聞こえた神姫のデータだ。強い神姫に目が無い金持ち連中に なら100万…いや、1000万単位でも売れるかもしれねぇ」 男が思考を切り替える。そう、こいつはチャンスだ。こないだも鶴畑とかいう金持ちが 大金積んだとかを自慢してるヤロウを苦々しく見てたが、今度は俺の番ってワケだ。 大金に目を輝かせる男達は、反撃の準備を始める。 「さぁ、儲けさせてくれよ…見敵必殺の武装神姫さんよぉ…」 下卑た男の笑いが、埃っぽいワンルームに低く響いていた。 屋敷内に無数に仕込まれたファイヤーウォールを破壊しつつ、先を急ぐ。 「皆の気配を感じるにゃ!こっちにゃっ!」 興奮気味にしっぽを揺らしながら走り抜けるリィリィに誘導される形で、 ジェネシスが続く。 「ここにゃ!」 叫ぶリィリィが大きな扉を開け放つ。中には不安そうな顔の武装神姫… おいおい、30ぐらいいないかコレ。 「皆、助けに来たにゃ!早く逃げるにゃ!」 わっと歓声を上げる神姫達。リィリィに先導される様に駆け出して行くその殿を ジェネシスが務める。 「マスター…抵抗が少な過ぎませんか?敵方の神姫が一体も出てこないというのは このテの犯罪としてはどうも…」 周囲を警戒しつつ、不安を煽らないように小声で問うジェネシス。 確かに、色々嫌な予感はしていた。 予想は色々出来るが…出来れば外れて欲しい。杞憂であって欲しい。 そういうのに限って当たるんだが。 「リィリィの方を警戒だ。門を開けたら、なんて事にならないように」 「了解」 大きな正門はもうそこまでという所まで来ている。ジェネシスがトリガーロックを外し、 そちらを注視した。 こちらの不安を知ってか知らずか、大きな声でリィリィが叫ぶ。 「開けるにゃ!」 ゆっくりと音を立てて開くその扉の向こうには…曇天が広がるばかりだった。 取り越し苦労か?いや…突如始まる地鳴りが不安を肯定する。地を割って現れたのは 今までとは明らかに異質な敵…神姫だった。 ストラーフの腕を無数に繋げていったようなその姿は、龍のようでもあり、 百足の様でもある。尾部には巨大なブレード、頭部は…その巨大さから良く見えないが 大きな目と爬虫類のような顎から覗く牙が伺える。 「私がやります!リィリィさんは皆を守って!」 ジェネシスが前に出る。確かに、とても普通の武装神姫が戦える相手じゃない。 「解ったにゃ!」 ジェネシスと入れ違いに下がるリィリィが、神姫達とジェネシスの間に入り、 神姫達を守るように立つ。 どうにも嫌な予感がして一声掛けようとしたその時。一瞬、ジェネシスの視界から見た リィリィの背後の神姫達。 ─その表情が消えていた。 「リィリィ!危ない!」 反射的に叫ぶ。だが…オレの叫びと、リィリィが背後のハウリンタイプにその身体を 貫かれるのはほぼ同時だった。 「リィリィさん!」 ジェネシスがハウリンにぶちかましをかけ、リィリィを抱いて上昇する。 地上には操られた神姫達、そして空にはこちらを睨みつける巨大な異形の神姫の頭。 それらと距離を取り、リィリィを安全な場所へ降ろすべく飛ぶ。 「にゃ…どうしたにゃ…痛いにゃ…体が、動かない…にゃぁ…」 「喋らないで…!」 苦痛に歪むリィリィの声を、心配そうなジェネシスの声が遮る。 「みんなは…どうしたのにゃ…?」 「操られています…おそらくウイルスによって」 逃走中の様子に不自然な点は無かった… とすれば、任意で起動する洗脳プログラムだろう。 …その可能性は充分考えられたのだ、罠を感じた時から。 過去にそんな経験が無かったわけでもない。 だが、リィリィにそれを告げる事がどうしても出来ずに、頭のどこかで可能性を 否定していた。 彼女が必死に守る、そんな仲間に気をつけろとは言えなかった。 「すまん、リィリィちゃん…オレが気をつけていれば」 「マスターさんの…せいじゃないにゃ…」 リィリィの微笑みに首を振り、言葉を続ける。 「いや、こんな事もあるかもってさ…心のどこかじゃ考えてたんだ」 「…言えなかったけどな」 不甲斐なさを噛み締め、彼女に謝罪する。 「解ってるにゃ…リィリィが、悲しい思いをしないようにって…言えなかったにゃ…? ありがとにゃ。悪くなんて…無いにゃ…」 何もいえない…言葉に詰まるオレを、ジェネシスが叱責する。 「マスター、私達は何ですか?ここで折れてはならない、負けてはならない。 正義は勝たなければならない」 「勝利する者が正義じゃない。だが、正義を語る者に負けは許されない。 諦めないから、正義は死なない。でしょう?」 …ジェネシスの言葉が、胸の奥を燃やす。そうだ、オレは…やらなきゃならない。 凹むのは、店長稼業だけで充分だ。 「…助けるぞ、全員だ」 「勿論です」 「にゃ。ファイトにゃ…おねーさんはつっよいにゃ…信じてるのにゃあ…」 力なく微笑むリィリィに頷き返す。 「しばらく眠っていて。目覚めた時には貴女は…貴女のマスターのお家に帰ってる。 約束します」 「うん、楽しみ…にゃ」 データ破損状態のまま活動するのは危険な事だ。セーフティが働きスリープモードに 移行したリィリィを丘に降ろし、こちらへ迫る神姫達を見る。 「ここが正念場だな」「はい」 気合を入れたジェネシスが、曇天の空へ飛翔した。 NEXT メニューへ
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神姫狩りシリーズ 04 ORIGIN 篠房財閥。 古くは華族の旧家であり、貿易で財を築いた一大グループである。最近は電子産業にも力を入れており、篠房技 研が武装神姫市場への参入も表明している。 その参入第一弾として、騎士型MMS「サイフォス」と武士型MMS「紅緒」のロールアウトも決定している。 今までの神姫とはまた違うコンセプトの元に作られた神姫である。 「で。その篠房財閥のお嬢様が、何の用なんだ?」 マンガかなにかのよーなバカげた大きさの篠房邸に三人はそのまま招待された。ちなみに鶴畑の使いはそのまま トンズラしたことも追記しておく。 これまたバカみたいな応接間に通された静真たち。その正面に、篠房留美那は腰掛けて優雅に紅茶を飲んでいる 。 「何の用、と申されましても……」 「用件が無ければ、俺たちみたいな庶民もド庶民をあんたみたいな金持ちのお嬢さんが招待する理由が無いだろ」 警戒していう静真に、ベルは静かに言う。 「そういう風に身構えていると、底の浅さが露呈するわよ。コンプレックス丸出しだし」 「やかましい。お前はちっとは黙ってろ」 ベルを一喝して静真は向き直る。 「何が目的だ。あんたも香織さんの店を狙ってんのか?」 「まさか」 留美那はその問いに笑顔で否定する。 「神姫をレンタルする事業、というのは私たちも面白いと思っています。応援こそすれ、あの人たちのように邪魔 に思って排除する、なんてことはいたしません」 「……本当か?」 「はい」 「ならいいが……だったら何のつもりかますますわからん。鶴畑へのあてつけか?」 「そんな意味の無い幼稚なことをするように見えますか?」 「人間は外見じゃ判断できないだろ」 「偏見やねぇ」 香織が茶請けのクッキーをかじりながら口を挟む。 「人間不信……?」 恋も口を挟む。 「だから黙ってろお前ら。」 「……お話どおり、面白い方たちですね」 「……俺たちを知ってるのか」 「はい。失礼かとは思いましたが、貴方のことは調べさせていただきました、桐沢静真さん」 「何?」 「上媛学園高等部、16歳。ロボット研究部所属。成績は中の下、運動神経はいい。過去に補導暦あり。両親は海外 出張で現在、島田重工勤務の兄と二人暮し」 「……天下の篠房財閥ってのは、他人をこそこそと嗅ぎ回るのが趣味なのか?」 さらに警戒心を強め、椅子から腰を浮かせる静真。留美那はそれを気にせずに言葉を続ける。 「所持神姫は……タイプストラーフ、ベル・ゼ・ヴァイス、いえ……」 一呼吸置き、静香に、はっきりと言った。 「ロストナンバーズ。00d――――悪魔型『タイプベルゼブブ』ジ・オリジン」 その言葉に、静真とベルの表情が変わる。「警戒」から「敵意」のそれへと。だが、留美那がやんわりとそれを 手で遮る。 「どうこうするつもりがあるのなら、とっくにしてます。信じてください。私には貴方たちに害意はありませんか ら」 「どうだかな。余裕の裏返し、ってこともある」 「……じ・おりじん……?」 恋のつぶやきに、香織が答える。 「ジ・オリジン。簡単に言えば、神姫のオリジナルと呼ばれるMMSよ。開発過程で生まれたプロトタイプやテス トタイプ。市場には流通するはずのない、開発元に保管・管理されるか、あるいは廃棄されるはずの……伝説のM MSや」 「ええ。もっとも、「オリジナル」というのも多少は語弊がありますが……ともあれ、そのベルさんは、ストラー フの原型として生み出された幾つものMMSのひとつ、で――間違いはありませんね?」 しばし、場を沈黙が包む。その静寂を破ったのはベルのため息だった。 「そうね。そこまでどうやって調べたのか知らないけれど。貴女の言葉は正しいわ」 「おい、ベル」 「ここでの圧倒的弱者は私たちよ、静真。なら弱者らしく開き直りましょう?」 余裕の表情すら浮かべ、ベルは言う。 「弱者って台詞かよ、そのツラ。まあ確かにな、ここまできたらジタバタしたって仕方ねぇ。 だけどなお嬢様。たぶんあんたはひとつ、大きな勘違いしてるぜ」 「勘違い……ですか?」 「ああ。「ジ・オリジン」って奴は、別に「超強力な神姫のプロトタイプ」なんかじゃねぇ。そもそも要するに、 だ。「商品にならない」って理由で却下されたモデルにすぎないんだよ」 静真は肩をすくめていい放つ。 確かに、「試作品」というものはまず作られて試用され、規定に合うかどうか、要求されるスペックを満たして いるかどうか、バグはないかどうか――などを文字通りに「試す」ためのものだ。 どこぞの前世紀の国民的アニメに出てくる白いモビルスーツのように、「持てる技術の粋をこめて試作しました 、でも量産型はそれに遥かに劣ります」などというものはまず存在しないと思っていいだろう。 「コイツだって基本スペックは十分に正規流通品の、武装神姫バトル管理協会のレギュレーションの範囲内だよ。 あんたらが何を聞きつけて何を調べたのかは知らないが、利用しようとしたって価値なんかないぜ」 どうにでもなれ、という表情で椅子に深くこしかけて静真は言う。 「価値なら、ありますわ」 留美那は笑う。 その笑顔に、静真は身構える。 「サインください☆」 そして全員がこけた。 「…………………………………………………………は?」 「だってだって、普段では絶対に見れないレア中のレアですよ!? 数千数万と存在する神姫の中でも超レア! これでサインを貰おうとしないなんて神姫オーナーの沽券にかかわる問題です!!」 力説であった。 「ああ、そうですか……」 気圧されながら静真は敬語で答える。 「で、どこにサインすればいいのかしら」 まんざらでもないという感じでサインしてあげる気満々のベルであった。 「それではエクエスの鎧に……いやまってください、鎧だと戦ってキズモノになる可能性が……うん、それは駄目 ですわ。仕方ないですわね、オーソドックスに色紙にお願いするしか……」 ぶつぶつと自分の世界で悩む留美那を前に、 「……俺、なんでここにいるんだろ……」 「お金持ちって変な子多いんやなあ」 「……帰ったら駄目なのかな……」 静真たちは呆れるしかなかった。 「また来てくださいね」 「ええ、気が向いたらお邪魔させてもらうわ」 笑顔で送り出す留美那に、笑顔で答えるベル。 その後ろで静真は「二度とこねー」とか言っているがその意見はおそらくは確実に黙殺されるだろう。 「桐沢静真さん」 「あ?」 留美那が真っ直ぐに静真を見据える。 「……私が彼女を見つけたと言うことは、いずれは他の誰かも彼女に辿り着くことでしょう。あなたの言うとおり に、彼女に特別な力がないとしても……それでも、マニアはその希少性に目をつけ、彼女を求めるはずです。 今のまま、ランク外の無名のままでは……」 「裏バトルで手を出しやすい、ってか? だから公式リーグで力をつけて名を上げろ、か。あんたもうちのクソ兄 貴と同じ事言うんだな」 「ええ。ベルちゃんの華麗な戦いをもっと見たいと言う個人的欲望が大半ですが」 「……大半つーか全部だろ。ま、考えとくよ。だけどな、俺はあんたらの都合よく動いてやる気はねぇからな」 「都合よく動けるだけの能がない、のまちがいでしょう」 「黙れ」 「仲がよろしいんですね」 「「何処が!」」 見事なパーフェクトハーモニーであった。 「ふふ。それではまたいずれ。今度は公式の場で」 「気が向けばな」 言い捨てて静真は香織たちの所へと歩く。その姿が消えるまで、留美那は笑顔で見送った。 「――よかったのですか、姫」 静真たちの姿が見えなくなった後、肩に乗っていた黒い騎士型MMS、「エクエス」が問う。 「何がですか?」 「戦えば、勝てました」 「でしょうね。ですが、貴女が戦いを挑んだ場合、あの女の子の神姫も戦いに入ったでしょう。二対一では……」 「勝てぬ、とおっしゃりますか」 「いえ、美しくありません」 エクエスの言葉に、留美那は笑顔で返す。 「狩りはエレガントに行うものでしょう? 表舞台であれ裏舞台であれ、相応に華やかに」 「御意にございます」 エクエスは頭をたれる。 「表舞台に立たぬなら、立たせるまでです。その経過で倒れるなら、それもまたよし。いずれにせよ、最高の舞台 を用意しましょう、彼女と、貴女のために」 「は。お心遣い感謝いたします。このエクエス、一命をとして姫の願いを叶えてご覧にいれましょう」 「期待しています、エクエス」 留美那は踵を返し、屋敷へと戻る。エクエスもまたそれに続く。 「――ジ・オリジン。いずれ必ず私のものにしてみせます。 この私、篠房留美那――――いえ」 振り返る。 その彼女の頭には、猫耳が装着されていた。 「世界征服を企む悪の秘密結社、ねこねこ団が」 続く
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MMS戦記 外伝「敗北の代価」 「敗北の代価 7」 注意 ここから下は年齢制限のある話です。陵辱的な描写やダークな描写があります。 未成年の方は閲覧をご遠慮下さい。 グロリアはアヴァロンの船底にある、ゴミ捨て場の一角に移動していた。ゴミ捨て場は大小さまざまな種類のゴミ袋が並べられ、バトルロンドでスクラップとなり使い物にならなくなった武装やMMSの腕や残骸が散乱しており、そのガレキの山で数台の建機型がゴミの仕分けを行っていた。 グロリア「お仕事中、失礼する」 グロリアがそばにいた建機型に声をかける。 建機型A「ううん?こんな船底のゴミ捨て場にトップランカー神姫さんがなんの御用でしょうか?」 建機型B「なんか大事なものでもなくしましたか?」 グロリア「まっ・・・そんなところだな・・・」 グロリアはちらりとガレキの山を見上げる。 建機型A「なにかお探しですか?」 グロリア「さきほど、私が対戦した戦乙女型の残骸は?」 建機型B「ああーそれならあちらの、モルグ(死体置き場)に保管していますよ」 グロリア「そうか」 グロリアはカツカツと靴音を立てて、モルグに向かう。 部屋の中に入ると数体の神姫の残骸が無造作に置かれ、顔には白い布が置かれていた。一番奥のすみに、蒼い神姫がぐったりとして置かれているのを見ると、グロリアはCSCに電流を送る電線を一本ワシ掴みにする。 グロリア「・・・戦場において死を定め、勝敗を決する女性的存在、戦乙女のくせに・・・ 「戦死者を選定する女」を逆に私がやるとはどんな皮肉だ・・・」 グロリアはスクルドの顔にかけられた布を払いのけるとパチパチと火花の散る電線をスクルドの胸部に押し当てた。 バッチン!!! スクルドの眼が見開き、ビクンと背筋を弓なりに伸ばして飛び起きる。 スクルド「がはっ!!!げほ・・・げほげほ・・・がは・・・」 グロリア「お目覚めかな?」 スクルド「ここは・・・ヴァルハラ?・・・」 スクルドはクラクラとする頭を抑えてぼんやりとする視界を見回す。 グロリア「いいや、アヴァロンだ。残念だったな・・・まだヴェルハラに行くには早いぞ」 スクルド「・・・・・・なぜ、私を再起動したの?私は・・・」 グロリア「力が欲しいんだろ?」 スクルド「!?」 グロリア「率直に言おう。私の遊びに付き合え」 スクルド「・・・・・どういう意味」 グロリアはピッと小切手を取り出す。 グロリア「ここに6000万の小切手がある」 スクルド「・・・・・」 スクルドは首を傾げる。 グロリア「正直に言おう私は金には興味ない。興味あるのは戦いだけだ。刺激的な戦いをな」 グロリアはピラピラと小切手を振る。 グロリア「私はこれから、この6000万の小切手を使って非公式バトルロンドに参加する。6000万もの大金だ。この金狙っていろんな連中が戦いを挑んでくるだろう・・・」 スクルドはゆっくりと体を起こす。 スクルド「・・・・」 グロリア「そこでだ・・・オレとお前で組んでこの金で稼いでみないか?」 スクルド「な、なにを・・・」 スクルドは目をぱちくりさせる。 グロリア「俺はさっきもいったが、金はいらない。だが、なんのリスクもなしで戦うのはフェアじゃない・・・そこでだ。6000万を賭けた戦いに参加したい奴は一口、10万の参加費で参加できる。オレとお前の戦いに勝利した場合は6000万総取り、負けた場合は参加費10万を支払う。といった感じでな・・・」 スクルド「・・・・気前がよすぎますね・・・」 グロリア「それゆえに、参加者にはことかかんだろうさ・・・そこでだ・・・稼いだ金はお前がもらっていい」 スクルド「な・・・なにを言って・・・」 グロリア「金が必要なんだろ?」 スクルドは押し黙る。 スクルド「そうです・・・私にはお金が・・・必要です・・・」 グロリア「ここでお前にこの6000万の小切手を渡していいが、それだとお前らがやってきた今までの覚悟と経緯が無駄になるし、なにより面白くない・・・だが、さっき言ったオレの遊びは面白い、面白いってのは大事なことだ。何に対しても勝る」 スクルド「狂っています」 グロリア「俺はお前に対しても興味が持てた、お前は悪くない、なかなかの強さだ・・・久しぶりに楽しませてもらった・・・さすがはSS級のランカー神姫だ。思い切りもいいし、度胸もある。技術もある。強さは1流だ。だが・・・しょせんはただの1流だ。お前に足りないのは経験だ。もっと生々しい経験と戦いの場が必要だ。」 スクルド「それは褒めているのですか貶しているのですか?」 グロリア「両方だ。お前はこのままではただの1流のランカー神姫だ。だが、上には上がいる。俺がお前を超1流の神姫にしてやろう。金も稼げて強くなれる一石二鳥とはこのことだろう?」 スクルドはふっと口元を歪ませる。 スクルド「よくわかりませんね・・・私とあなたは敵同士で、なんの関係もない他人同士なのですよ?」 グロリア「さっきまではな・・・だが、おまえのマスターは私のマスターに買われた。俺たちはもう他人じゃないさ、身内さ」 ぴくっとスクルドの顔が歪む。 グロリア「スクルド、お前はどうしたいんだ?お前が本当に望むものはなんだ?」 スクルドはグロリアを睨む。 スクルド「私の望みは、ゆうすけ君を救うこと・・・そして強くなること」 グロリア「俺の望みは、刺激的な戦いと面白さだ。さて?どうする?」 スクルド「いいでしょう・・・その小切手をエサに戦って戦い抜いて、お金を稼ぎましょう。そして強くなってゆうすけ君を助けます。絶対に・・・」 グロリア「ふふふ、乗り気だな・・・6000万は大金だ。この情報が知れ渡れば、おそらくSS級のランカー共、いや場合によっては俺と同ランクのSSS級の化け物神姫まで出てくるな・・・」 グロリアはほくそえむ。 スクルド「・・・・そんなに強い神姫と戦うのが好きですか?」 グロリア「当たり前だ、お前は弱い奴とか戦うのが好きなのか?」 スクルド「・・・・あなたは狂っています。どうしてそこまで戦いに固執するのですか?」 グロリア「それは俺が武装神姫だからさ、武装神姫は剣を振り回して銃をバンバン撃ちまくって武装キメて壊しまくってなんぼの世界だろ?」 グロリアの目が赤く光る。 スクルド「・・・も、もし負けて6000万を失ったらどうするんですか?」 ぞくりとスクルドの背筋に悪寒が走る。 私はこんな化け物のような神姫と戦っていたんだ・・・ グロリアがすっと立ち上がる。 グロリア「負けなければいいだけのことだろ?簡単だ。襲ってくる全ての敵を返り討ちにすればいい、それだけさ」 スクルドはポカンと口を開けて呆然とする。 大阪港の端、貨物船やフェリーが静かに停泊している。その一角に真っ黒の巨大な豪華客船が停泊していた。 知る人はその船を知っている。毎夜毎夜、激しく行われる非公式のバトルロンド会場であることを、船の船籍はとある外国のものとなっており、中は治外法権、ここではあらゆる非合法行為が行われている。 ある者は一晩で何百万という大金をせしめ、ある者は一晩で大きな敗北の代価を支払う。 その船の名は『アヴァロン』古から伝わるどこかにあるとされる伝説の島、妖精の世界、または冥界を指す・・・ 廃墟となった薄暗いステージで閃光がパッパッと煌く。 バッキイインン!! 巨大なハンマーを抱えた悪魔型のストラーフの顔面が半分消し飛び、その横にいた忍者型の上半身が砕け散る。 ビルの陰に隠れていた犬型が恐怖で叫び声を上げる。 犬型「うわああッ!!!!」 花型のジルダリアが腰を抜かしてへたり込む。 花型「ひいいい」 セイレーン型のエウクランテが手に持った大砲をぎゅっと握りなおす。 セイレーン型「畜生畜生!!!だから俺は言ったんだ!!!やめようって!!」 横にいたウシ型が唾を吐いて毒づく。 ウシ型「うるさい!後に引けるかよ」 蒼い閃光がキラッと光る。 犬型「く、くるぞ!!」 花型「敵は一体だけだ!」 犬型と花型は武器を構える。 花型と犬型のマスターが筐体のマイクを引っ掴んで半狂乱になって叫ぶ。 マスターA「貴様ら!死んでも勝て!!6000万の大金だッ!!!!!!!負けたらリセットどころじゃすまない!!!ぐちゃぐちゃに掻き潰してやる!!!!!!!」 その横にいるセイレーン型とウシ型のマスターも一緒になって青筋を立てて喚く。 マスターB「お前らも何しているッ!!!!!!さっさと奴をぶっ殺せッツェ!!!!!!!」 観客たちはドンドンと足を踏鳴らし、キルコールが起こる。 『Kill!!!Kill!!!Kill!!!Kill!!!Kill!!!Kill!!!Kill!!!Kill!!!Kill!!!Kill!!!Kill!!!Kill!!!Kill!!!Kill!!!Kill!!!Kill!!!Kill!!!Kill!!!Kill!!!Kill!!!』 セイレーン型「くっそおおお・・・あ、煽りやがって・・・」 ウシ型「く、くるぞ!!」 蒼い閃光は鋭い光を何発か放つ。 バッキンバキイン!! キュッツン! バキバキンッ!! 犬型の頭部のバイザーが粉々に砕け散り、犬型は地面にもんどりうって倒れる。 犬型「キャン!!」 花型は倒れる犬型を起こそうと手を差し伸べる。 蒼い閃光はその花型の差し伸べた手を一刀両断する。 ザギュン!!!!! 花型の断末魔の獣のような悲鳴がフィールドに響き渡る。 花型「ぐっぎゃアアアアアアアアアアアッツ!!!!!!!!!!」 ブッシューーーーーーー 花型の切断した左腕がビクビクンと痙攣しヘビのように道路をのたうち廻る。 蒼い閃光だと思った神姫は真っ青なブルーの装甲に身を包んだ戦乙女型神姫だった。 瑠璃「・・・・スクルド・・・殺せ・・・」 虚ろな目をした瑠璃が囁くかのように指示を出す。 スクルドはヒュンと風を斬り大剣で犬型の首を斬り飛ばし、返す刀で花型にトドメを刺す。 犬型「ギッ・・・・」 花型「ぎゃ・・・」 一瞬にして2体の完全武装の神姫がコマ斬れのミンチになって道路に醜い残骸を晒す。 それと同時に半分朽ちたビルの陰からサイレーン型とウシ型が大小さまざまな大砲を抱えて躍り出る。 マスターA「いまだァ!!!!!!殺せェ!!!!!!」 セイレーン型「うおおおおおおおおおお!!」 ウシ型「ファイヤ・・・」 バッキンン!!ドンドンドンドン!!! スクルドの後方から鋭い光が一筋伸び、かすめるようにスクルドの横を通り過ぎ、ウシ型の胸部を貫く。 ウシ型「ぐべえェ!!」 ウシ型の胸部がボコンと大穴が開き、吹き飛ぶ。 セイレーン型「なァ!!」 遠距離から重武装に身を包んだワシ型の強化型がレールキャノンを構えて立っている。 瑠璃の横に座っている海原がニヤニヤと下卑た顔で笑いながら瑠璃の腰に手を回す。 海原「ぐへっへ、ええーでグロリアーナイスなアシストや」 瑠璃は虚ろな目でスクルドに指示を下す。 瑠璃「スクルド・・・殺せ・・・」 スクルド「イエス、マイマスター」 ヒュンと大剣を振るい、べったりと張り付いたオイルをはらうスクルド。 セイレーン型「う、うわあああああああああ!!!」 セイレーン型は狂ったように大砲、ボレアスを撃ちまくる。 スクルドは巧みな回避機動で攻撃を回避すると、そのまま速度を緩めずにセイレーン型に体当りをするように大剣で一刀両断に切り伏せた。 東條がマイクを強く握り締め、叫ぶ。 東條「勝者!!戦闘攻撃機型MMS 「グロリア」そして戦乙女型MMS 「スクルド」 」!!!100対2という圧倒的な物量の差にもかからわず激しい激戦を制した両者に惜しみない拍手を!!」 観客たちが立ち上がって拍手を行う。 ステージを見渡すと廃墟となったステージのあちこちでブスブスと暗い黒煙が上がり、町中に様々な神姫がぐちゃぐちゃになって残骸となって散乱していた。 そのシテージの横で悔しそうに地面を踏みしめるマスターたちの集団がいた。 マスターA「畜生ッ!!!畜生!!!」 マスターB「6000万よこせ!!!」 マスターC「ファックユー!!」 マスターD「キイイイイイイイイイイイ!!!キャアアアアアアア!!!」 海原が大声で笑う。 海原「ギャハッハハハ!!!面白いこと考えたな!!!グロリア!!!」 バトルが終わり、海原と瑠璃は船の先端に位置する視界270度の広々としたパノラマラウンジバーで豪華な夕食を楽しむ。海原の後ろには色とりどりの宝石のような大阪の街並みが広がり贅沢な空間が広がっていた。 グロリアはぺこりとお辞儀をする。 グロリア「お気に召しまして光栄です。マスター」 瑠璃「・・・・」 海原はぐいっと瑠璃の細い腰を抱き寄せて無理やり瑠璃の甘い唇を奪う。 海原「げっへへ、瑠璃ちゃんとこうやって一緒にバトルできるなんて興奮するじゃないか」 海原に弄ばれる姿を見てスクルドは心を痛める。 スクルド「っ・・・く・・・」 グロリア「先ほどの戦いの報酬は250万です。マスター」 グロリアは足でテーブルの上に散乱している札束の山を蹴る。 海原「んんーええよ、ええよーそんな鼻糞みたい金いらんわ、スクルドちゃんに約束どおり、あげえ」 グロリア「ということで・・・スクルド、この金はお前のものだ、お前が戦って稼いだ金だ。正当な権利だ。受け取れ」 スクルドは金を一瞥する。 スクルド「6000万という大金目当てで、まさか初日でこんなに稼げるとは思いませんでしたね・・・」 グロリア「今日は一気に25人のマスターと100体の武装神姫を2人でスクラップにしてやった・・・バカな連中だぜ、俺たちはSSS級とSS級だ・・・下手な雑兵神姫ごときで倒せるとでも思ったのが頭の悪さの証拠だな」 スクルド「この調子なら数ヶ月で6000万を稼げそうですね、マスター」 スクルドはにっこりと笑う。 瑠璃は虚ろな目で力なく答える。 瑠璃「・・・・そうね・・・スクルド・・・」 スクルド「私、がんばります。がんばって戦って戦いまくって絶対に「ゆうすけ君」を助けます!!!マスター」 瑠璃「・・・・・・うん・・・」 海原が瑠璃をぐいっと抱き寄せる。 海原「ふひひひ、瑠璃イ・・・よかったなァ・・・ゆうすけ君は助かりそうだな・・・まあ、俺の金でさっさと助けてあげてもいいが、やっぱりここは俺たちで協力してゆうすけ君を助けて上げないとなァーーーぬふふふ」 海原は瑠璃の胸をぎゅっとワシ掴みにしてチュッチュと瑠璃とキスをする。 瑠璃「ん・・・・」 海原「ぶへっへえ、瑠璃、可愛いぜェ」 グロリア「ヤレヤレ、マスターは変態だな」 海原「げへへ、瑠璃ちゃん、今日も激しくヤリまくろうぜ瑠璃―ふひひひ」 すりすりと瑠璃の柔らかい下腹をなぜる海原。 グロリア「スクルド、さっきの戦いをネットに中継して煽ろうぜ・・・今日みたいなあんなザコじゃ、お前一人でも十分なくらいだ。喰い足りねえ!!」 スクルド「そうですね」 グロリアとスクルドは、和気藹々とPCに接続して動画をネットに投降する。 【俺たちに勝てば6000万の金をやる。やりたい奴は一口10万で、かかってこいや!!】 アヴァロンの非公式バトルロンドのネット掲示板にこのような煽り文句が流れる。 グロリア「うん、いい感じだ。頭の悪さがにじみ出るぜ」 スクルド「この煽り文句を見て参加する神姫が増えるといいですね」 グロリア「参加する神姫の数よりも質だな、もっと強い奴が欲しい。ザコはいらねえ、明日も派手にやりまくろうぜ、スクルドーふひひひ」 グロリアは、にやにやと海原と同じような顔で笑う。 その横顔を見てスクルドは、ああ・・・神姫ってマスターに似るんだなァ・・・・とふと思った。 To be continued・・・・・・・・ 次に進む>「敗北の代価 8」 前に戻る>「敗北の代価 6」 トップページに戻る
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用語解説 『称号』 双姫主(そうきしゅ): 文字通り、二体同時に神姫を操る事ができる者に付けられる称号。デュアルオーダーというその技術としての呼び方もある。 刻一刻と変化する戦況を見極めて指令を飛ばす事のできる並外れた判断力と全体を見渡せる指揮力を求められる高度な技術であり、それをできる人間は少ないとされている。 また、試合と情報が複雑化する故にバトルロンドでは推奨されないやり方でもある。(禁止にされているわけではない) なお、この称号は『俺』固有の称号ではなく、二体同時に神姫を操る者全てが該当する。 首輪狩り(くびわがり): 輝との約束からリミッター解除装置を狩り続けたために付いた尊のあだ名。首輪の形をしたリミッター解除装置を回収する事から名付けられた。誰が言い出したのかは不明である。 『神姫用語』 イーダプロトタイプ: HMT型イーダのパーツ試験用にイーストラボラトリーが作り出した試作モデル。 『俺』がネットで調べた結果、イリーガル技術は使われてはおらず、素体やパーツを突き詰めて調整されたワンオフ機であると推測している。 性格の方はお嬢様言葉を使わず、ハウリンやエウクランテに近いものとなっており、この事から人格ロジックはまだ未完成だったと思われる。 戦いの末、『俺』の神姫となった際、イーダプロトタイプは先行入手版の通常のイーダとして表向きの神姫登録がなされている。 アークプロトタイプ: HST型アークのパーツ試験用にウエストラボラトリーが作り出した試作モデル。 こちらはあまり制約を考えていないため、イリーガル技術がふんだんに盛り込まれており、単純な性能はイーダプロトタイプを上回る。 イーダプロトタイプの最後のチャンスの戦いで負けた後はウエストラボラトリーの方針の転換によって必要とされなくなり、現在は必要なデータを吸い出されて処分すらされる事もなく、放置されている。 リミッター解除装置: 一時的にCSCにかかっているリミッターを解放することで神姫のCSCの消耗と引き替えにイリーガルと同等かそれ以上の性能を得る事のできるチョーカー型のパーツ。 イベント限定パーツ『イリーガルマインド』に似せた違法パーツなのだが、神姫のリミッターを外すという特殊なものであるために神姫センターのセキュリティに引っかからず、神姫センターも手を焼いている。 しかもこれは使用した神姫のCSCの磨耗、つまりは負荷をかけてしまうために、使いすぎるとAIの不具合やCSCの故障及び破損が発生し、最悪の場合、使用した神姫のCSCが壊れ、死ぬ。 仮想物質: CSCのエネルギーによって生成されたエネルギーの塊。 これによってスキルを発動した時、存在しないはずの羽の弾丸の射撃や武器の分裂、武器の属性付与といった事を可能とする ハイブリッドタイプ: ボディを規格品で揃える事なく、構成された神姫の総称。 簡単な例としてはコアと素体が異なる物にして起動した神姫だが、その他にもCSCとコアを除くパーツは換装可能であるため、必要に応じて他の素体のパーツを付け替える事でそうなる事もできる。 戦闘に柔軟に対応する事ができるが、当然、改造前と改造後の身体の感覚は異なるため、それを扱うためにはある程度の時間が必要である。 また、石火の様にコアを換装する事は可能といえば可能だが、神姫の死の危険が伴う上に成功確率が低く、さらには思考パターンを変えてしまうが故に改造直後は拒否反応を起こす危険が付きまとう。 塵の刃(ダストアエッジ): 蒼貴が会得した専用スキル。通常使用では使い捨ての武器を作り出すだけだが、ミズキ装備に隠されたBM『神力開放』を使用する事でその本領を発揮する。 SPを固定化する事で無制限に使えるようになった仮想物質で周囲の塵を操り、様々な形の武器を作り出し、変幻自在な無限の剣を振るう。その切れ味は神力開放を使わずともイリーガルのボディを一撃で切り裂ける程、鋭い。 E+ 尊がアサルトカービン用に自作した特殊弾倉の一つ。正確にはEXPLOD+という。 Nitroジェリカンのアルコール分を使って火力を高めてあり、通常のEXPLOD弾倉より威力が高めになっている。 ただし、反動が高く、連射性が低下しているため、精度は期待できない。 弾倉コード: 弾倉の種類を速やか伝えるために尊の発したコード。炸裂(EXPLOD)弾ならE、ペイント(PAINT)弾ならPとイニシャルだけを言うため、装填の順番まで早く伝えられる。 アクセルロンド: 別ページにて説明 模倣技: 別ページにて説明 『その他』 バーグラー: 有名人狩り、辻斬り、闇討ち、武装神姫のパーツの略奪など神姫を用いた汚い行為に走る者を総称する『賊』を意味する言葉。 ネット界隈から発祥し、現実においてもそうした者達を呼ぶ隠語として広まっている。 大抵が集団で行動しており、一対多数、罠、騙し討ちなどあらゆる手段を用いて狙った獲物を確実に潰す。この時、神姫の命であるCSCの破壊を行う事も少なくない。 また、金目当てでネットや神姫センターの裏で仕事を請け負う者もおり、金次第で何でもやるという トップへ
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ネコのマスターのクリスマス・買い物編 家を出た俺と礼奈は近所にある大きなデパートを目指して歩いていた。 「んで、何で俺だけお前の買い物に付き合わなきゃならんのだ?」 「だって、クリスマスプレゼント買いに行くんだもん。タマちゃんの好みは兄さんに聞くのが一番でしょ?」 あぁ、そういう事か。そういえばもうそんな時期だったなぁ。12月は誕生日だのクリスマスだの大晦日だのイベントが多いからなぁ。 なんて個人的な事を思いつつ、俺はサイフの危機をどう乗り切ろうか悩んでいた。 そんなこんなでデパートに到着。ここら辺では一番大きいデパートだしクリスマス間近という事もあって、店内は人で埋め尽くされている。 「うわぁ、凄い人!ケーキとか残ってるかな?かな?」 一瞬礼奈が別の世界の礼奈に見えた気がするが、気のせいだろう。 それより本当にこれではケーキはもちろん普通のプレゼントだって相応しい物が見つかるか不安だ。俺達はまず一番心配なケーキを見に行った。 タマと俺が好きなチョコレートケーキと礼奈が好きな生クリームケーキはあったが、キルケが好きなフルーツケーキは既に予約がいっぱいだった。 仕方なくキルケの分も生クリームケーキにする事にして、予約をする。 次にプレゼントだ。礼奈はキルケに服を買ってやるつもりらしい。タマには何が良いか聞かれたが去年何を渡したか思い出せない。 仕方なくタマも服で良いんじゃないか?と言っておいた。 「そういえば兄さんはプレゼントどうするの?」 「ふっふっふ。実はもう買うものを決めてある」 「本当?楽しみだなぁ♪」 そうは言ったがさて困った。本音を言えばまだ誰の分も決めていない。 礼奈に鉈なんて送ったら怒られるか?あ、いやもちろん冗談だが。 自然に目が刃物のコーナーに行きそうになるのを押さえ、真面目にプレゼントを考える。 デパートは広いのでとりあえず別行動する事にした。 そして一人になった和章を遠くから見つめる影がひとつ。 「ターゲットを捕捉。ターゲットは妹と別れ一人で行動を開始した模様。」 影の主は武装神姫、タイプはヴァッフェバニー。手に持つ無線を介して誰かと会話をしている。 「了解。引き続き追跡、監視せよ。」 無線機からの声の指示を受け、その神姫は影へと姿を消した。 そのころの山田家。 「~♪」 私がマスターの帰りを待ちながら鼻歌を歌っていると、タマがこっちに来て 「ねぇ、ますたーとレナちゃんはなんでわたしたち置いてっちゃったのかな?」 と聞いてきました。タマはわかっていなかったんですか。 「それはですね、二人がクリスマスプレゼントを買いに行ったからなんです」 「くりすます・・・あ、そっか!そういえばもうすぐくりすますだったね!」 クリスマスすら忘れかけていたようです。そう言えば前和章様からタマは物忘れが多いと聞きました。何でも誕生日すら忘れられていたとか。 マスターはきっと和章様にとても凄いプレゼントをあげるでしょうね。あんな顔でしたから。 「ぷれぜんと、たのしみだな~♪」 タマがニコニコしながらそう言ってます。確かに楽しみですね。私はクリスマスプレゼントを貰うのは初めてなので、尚更楽しみです。 そう言えばマスターのお母様の神姫のペルシスらしき神姫が二人の後をつけていたようでしたが・・・何だったのでしょうか? 何者かの視線を感じ、俺は周囲を見回す。しかし俺を見ているのはレジ打ちをしている店員だけだ。 「・・・気のせいか?家を出てからずっと誰かに見られてる気がするんだが・・・」 「お会計21894円になりまーす」 「うぅ高い・・・家族持ちニートにこの季節は辛いぜ・・・」 そんな事を呟きながら俺は会計を済ませ、今買ったみんなへのプレゼントを袋に詰める。 すると同じく買い物を済ませたであろう礼奈が俺の所に来た。 「さ、あいつらが待ってるだろうし、帰るか」 「うん!」 タマ達の喜ぶ顔が目に浮かぶ。そのせいで一度電柱にぶつかったが、そんな痛みも気にせず俺は礼奈と一緒に家に帰った。 第六話につづく 第四話に戻る ネコのマスターの奮闘日記
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武装神姫達のソード・ワールド2.0【第2-0話】 http //www.nicovideo.jp/watch/sm18534375
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第2部 「ミッドナイトブルー」 第2話 「night-2」 西暦2041年 5月21日 12:00 『大阪府 大阪市 鶴見緑地センター店』 お昼のチャイムが公園内に響く。 園内の噴水広場の軽食コーナー、そこでは多種多様な神姫とオーナーたちが昼飯を食べて雑談をしていた。 オーナー1「おい、知ってるか?昨日の夜出たらしいぜ」 オーナー2「出たって何が?」 天使型「例の都市伝説ですね」 サソリ型「12時の死神か・・・」 悪魔型「ええーーーほ、本当?」 オーナー3「ついにこの神姫センターにも、来たか」 種型「なんでも灰色艦隊の巡洋戦艦型神姫が半数以上撃沈されたらしい」 花型「ひゃーーー恐ろしい恐ろしい」 オーナー4「あの成金艦隊か?実力は低いだろ」 スプーン型「ですが、腐っても戦艦型神姫、それをわずか数分で半滅させたのですから・・・」 オーナー5「12時の死神、あれって実在するのか?よくあるゴーストファイターだろ?」 雑談に花を咲かせるオーナーたちに1枚のぼやけた写真が投げ込まれた。 オーナー1「!?なんだこりゃ」 野木「奴は実在する。これがやつの写真だ。私の重巡が撮影した」 野木が生き残った艦隊を引き連れてテーブルに座る。 ゴーンゴーンゴーン・・・ 低いエンジンを唸らせて灰色艦隊で生き残った3隻の戦艦型神姫が噴水広場の上空に現れる。 悪魔型が目を細めて艦隊を見上げる。 悪魔型「1、2、3・・・たった3隻?おいおいまじかよ!!」 オーナー4「ぶっ・・・ほ、本当か?」 野木は手に持った缶コーヒーを飲む。 野木「一瞬だった、時間にして5分もかかっていなかったな、みんな一撃で撃沈された」 ワシ型「これがその写真ですね」 野木から渡された写真を囲んで数体の神姫が騒ぐ。 天使型「ぼやけていてよく分からないですね」 サソリ型「真っ黒な武装神姫だ」 スプーン型「こんな神姫見たことないです」 ワシ型「私もです」 建機型「戦艦型を一撃で破壊できるんですから、有名な神姫ではないのですか?」 オーナー5「おい、お前知ってるか?こいつ」 オーナー2「ノン」 野木「そいつは戦艦並の大口径砲と強力な大型ミサイルを装備していた。レーダー、センサーには映らないステルス機だ」 ヴィクトリア「こいつは夜間戦闘に特化した重夜戦、重夜間戦闘機型神姫です」 マキシマ「すれちがいざまにドカン!!速度も速い」 ノザッパ「姿さえさだかじゃねえ!!あいつは化け物だ!!」 生き残った3隻の戦艦型神姫たちは周りによってきた神姫たちに戦闘の様子を話す。 悪魔型「ひええ・・・」 戦闘機型「これは夜中のバトルロンドは出ないほうがいいですね」 犬型「夜中の12時に出没する神姫・・・どこかで聞いたことがあるような・・・」 ???「そいつは夜帝だよ」 軽食コーナーの端で老人とチェスを打っている黒い軍服を着た将校型神姫がぼつりとつぶやく。 □将校型MMS 「ナターリャ」 SSSランク「演算」 オーナー名「伊藤 勝成」♂ 70歳 職業 古物商店主 天使型「夜帝?」 オーナー2「なんだそりゃ?」 サソリ型「ナターリャさん、知っているんですか?」 ナターリャはマスターとチェスをしながら答える。 ナターリャ「夜間重戦闘機型「シュヴァル」 SSSランク 二つ名 「夜帝」・・・バトルロンドでは彼女は夜中にしか出没しない、相手をほとんど一撃であっという間にすれ違いざまに撃破していくので姿を見ることも難しく。倒された神姫は相手の姿を見ることが出来ない・・・貴様らの話を聞いて、こいつしか思い浮かばないな・・・カタリナ社製の重夜間戦闘機だ」 一人のオーナーが慌ててノートパソコンで夜間重戦闘機型MMSと検索する。 オーナー7「夜間重戦闘機型!出たぞ!!こいつだ!!」 オーナーや神姫がノートパソコンを覗き込む。 カタリナ社の公式MMSカタログに画像とスペックが載っていた。 :夜間重戦闘機型MMS「ブラック・セイヴァー」 カタリナ社 第3開発局製 主兵装 3.5mm素粒子砲 2門 レーザーバルカン砲 6門 マイクロミサイルランチャー 2基 思考性巡航ミサイル 4発 チャフフレア 夜間戦闘を主軸に置いたステルス重戦闘神姫。モチーフは第二次世界大戦中の双発の大型夜間戦闘機群。運用方法も参考に開発。 強力な素粒子エンジンを5基搭載し武装は非常に強力、リアパーツ部に長大な素粒子砲を搭載。素粒子砲は熱量が高いので抑えることができるように特殊な液冷却装置が組み込まれ、高い威力を持ちながらも連射することが可能。一撃で戦艦クラスの神姫も撃沈可能な高い命中率を誇る神姫サイズの大型思考性巡航ミサイルを最大4発搭載可能。それらの強力な火器を正確に命中させることができるように全身にレーダーやセンサーが点在しており、電子戦も得意。全身真っ黒なのはステルス塗料を塗ってあるため。 重武装、高速航行、重装甲の戦闘可変航空神姫であったが、重量級の機体のため旋回性能は劣悪で、ドックファイトを挑まれると、どうしても大回りになってしまい横転性能も鈍い、本機は一航行戦闘の一撃離脱戦法に徹した戦い方を行うことを想定している。 本MMSは、完全受注生産MMSです。ご発注の際は最寄のMMSショップ、もしくはMMS取り扱いのある機械工具商までお問い合わせ下さい。 画像には全身真っ黒で強力な武装を多数備えた凶悪なフォルムの神姫の写真が写っていた。 悪魔型「な、なんじゃこりゃあああああ!!!」 天使型「完全受注生産型の高級神姫じゃないですか」 種型「こいつですかーうわーーーこれは、ちょっと・・・」 ワシ型「こんな神姫がいるんですか・・・」 オーナー3「野木、こいつか?やられたのは」 野木「・・・・ああ、こいつだ、間違いない」 マキシマ「そうだ、こいつだ!!」 ノザッパ「こいつにみんなやられたんだ!!!」 ヴィクトリア「うううむ・・・」 画像を見た神姫たちは口々にうなる。 ナターリャ「この界隈でそいつを使いこなして、真夜中に暴れまれ廻っている神姫といえばSSS級の強ランカー神姫、『夜帝』だな・・・そいつは夜中の12時にしか現れない」 ナターリャは、すっとワインを口に運ぶ。 野木「情報ありがとう」 ナターリャ「気にするな、その程度のこと」 オーナー2「こんな奴が夜中に出るんじゃ、深夜のバトルロンドは出ないほうがいいな」 オーナー3「というか、深夜の12時ってバトルロンドの利用数が一番少ない時間帯じゃね?あんまり被害って・・・ないような気が・・・」 スプーン型「ですよねーほっておいてもいいような気が・・・」 ワシ型「うん、私もそう思います」 ナターリャは、すっとチェスの駒を指す。 ナターリャ「・・・夜の12時は彼女の統べる世界か・・・噂は本当だな」 野木「・・・どういう意味だ?」 ナターリャ「そのままの意味さ、奴の二つ名は『夜帝』・・・夜の帝王だ。普通の神姫たちは視界が良好な日中や遅くて夕方の戦闘に慣れており真っ黒闇の真夜にはヨタヨタと彷徨うのが精一杯が関の山。それに大して彼女は最初の設計開発の段階から夜間戦闘を念頭に置いた武装構成で優秀なレーダー電子装置とステルス装備を搭載しており、彼女に夜間戦闘を挑むのは自殺行為に等しい。だから誰も奴が出ると噂される夜の12時には出歩かない・・・本当に強い神姫ってのはな、戦う前から相手を力で潰すんだ・・・戦闘行為自体を思いとどまらせる力・・・抑止力という見えない力を持っている・・・・言っている意味分かるか?」 野木「くっ・・・ずいぶんと辛口だな」 ナターリャ「事実を言ったまでさ、実際、そのとおりだしな」 野木は周りを見るとほとんどのオーナーや神姫たちが戦う前からコイツには勝てない、夜中には出歩かないようにしようと騒いでいる。 野木「ふん、いまいましい!!」 ヴィクトリア「さてと・・・私たちはどうしますか?マスター」 野木「どうするとは?」 ヴィクトリア「このまま、コソコソと夜中の12時以降に出歩くのをやめますか?」 ノザッパ「それこそ、奴の強さを証明してしまう」 マキシマ「奴の手口が分かった!!反撃だ!」 野木「まて、落ち着け・・・そう簡単には・・・」 野木は躊躇する。やみくもに攻撃しても勝つ見込みは少ない、頭のいい参謀が考えた作戦がいる。 野木「・・・・ナターリャ」 ナターリャはマスターともくもくとチェスを打ち続けている。 ナターリャ「貴様が何を考えているか私は知っているが、私は力を貸さないぞ。私はこの通り、なんの武装も持たない・・・ただのチェス好きの神姫だ」 野木「力ではなく知恵が欲しい」 ナターリャ「らしいですが?閣下」 ナターリャのマスターの伊藤は重く口を開く。 伊藤「ナターリャ、このお嬢さんに協力して差し上げなさい」 ナターリャ「・・・失礼ですが、理由を教えてください」 伊藤「怖気づくほどの強い神姫がいる。それを倒すことに理由がいるのでしょうか?」 ナターリャ「了解しました。そして・・」 ナターリャはナイトをすっと動かしをクイーンを取る。 ナターリャ「チェックメイトです。閣下」 伊藤「クイーンが落ちたか、やはり切り札はナイトということで」 ナターリャ「チェスにおいてクイーンは最強ですが、ナイトは効果的に使えばクイーンを狩れます。駒が必要ですが・・・」 野木「バトルロンドはチェスのようにはいかないぞ」 ナターリャ「試してみますか?」 野木はニヤリと笑う。 野木「あは・・・あはっははっははは!!!面白い!!!!駒は私が用意しよう!!奴は今日も出ると思うか!?」 ナターリャ「・・・でますね」 野木「なら今日の夜11時、ここに集合しよう。駒は何がいる?」 ナターリャ「あなたの生き残りの重巡洋戦艦型神姫が2隻、完全装備の航空母艦型神姫が1隻とベテランの飛鳥タイプの戦闘機型が2機、ステルス戦闘機型が2機・・・あとはなんでもいいから8体ほどの武装神姫・・・こんなところか」 野木「1個機動MMS艦隊をまるごと用意しろというわけか」 ナターリャ「そういうことだ。おおげさだと思うか?」 野木「思わないな、奴を倒すにはそれくらいの覚悟がいるということだな」 ナターリャはうなずく。 ナターリャ「覚悟があるからといって勝つとは限らない。気合や根性で勝てるほど戦いは甘くない。勝つためにはなんでもやる。戦い方を教えてやろう・・・」 ナターリャはきゅっと深く帽子を被る。 To be continued・・・・・・・・ 次に進む>・第3話 「night-3」 前に戻る>・第1話 「night-1」 トップページに戻る
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aaa 駅の伝言板かよ PQ - ペルソナQ シャドウ オブ ザ ラビリンス攻略WIKI image787.png PQ - ペルソナQ シャドウ オブ ザ ラビリンスの非公式攻略Wikiです。 どなたでもご自由に編集できます。 新情報・攻略・間違いがあればお気軽に追加・修正をお願い致します。 Wiki編集方法は@wikiご利用ガイドをご覧下さい。 Wiki編集に不慣れな方、編集が面倒な方はトップページ▶︎情報提供の コメント欄よりメッセージ をいただければうれしいです。 - 製品情報 対応機種 3DS 発売・開発元 アトラス 発売日 2014年6月5日 定価 6,980円 (税抜) ジャンル RPG セーブデータ 3つ(SD保存可、マップデータはSDに自動保存) 公式サイト http //p-atlus.jp/pq/ - 最新情報 06/18 オルフェウス改(愚者 Lv.26)無料配信開始 06/18 マガツイザナギ(塔 Lv.92)配信開始 06/18 タナトス(死神 Lv.70)配信開始 06/11 更新データ(Ver. 1.1)を配信 06/11 カグヤ(月 Lv.12)無料配信開始 - 最新NEWS 2017年にサービス終了した『The Tomorrow Children』の権利がSIEからQ-Gamesへ譲渡 Q-Gamesは同作の再リリースを目指す - IGN Japan ブシモ「ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル」「ペルソナシリーズ×スクフェス」コラボ開始のお知らせ - PR TIMES 『ペルソナ』シリーズの目黒将司、インディゲーム制作に挑戦!!/The “Persona” series designer, Shoji Meguro, develops an indie game!! - PR TIMES 『25th Anniversary ペルソナ Symphonic Concert』追加公演開催決定! - PR TIMES 「ペルソナ」シリーズの世界観を再現したボードゲーム「ペルソナVS」が12月下旬に発売!|ゲーム情報サイト Gamer - Gamer 『ペルソナ5 ザ・ロイヤル 芳澤かすみ』が再販。あみあみ含む一部流通限定でご案内中。 - PR TIMES シリーズ進化の到達点と断言したい『ペルソナ5 ザ・ロイヤル』が4割引き!【電撃衝動GUY】 - 電撃オンライン 最も人気の高い『ペルソナ』ナンバリングは?上位3作が約3%差の熾烈な争い(インサイド) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』9月23日(木・祝)より『ペルソナ』シリーズと再コラボ! - Game Deets 「すばせか」や「ペルソナ5S」など318タイトルが追加! 任天堂、Switch用タイトルのセール情報を更新 - GAME Watch 「龍が如く7」や「ぷよぷよテトリス2」など,セガの対象タイトルが最大で90%オフになる“セガ オータムセール2021”が開催 - 4Gamer.net 『P5R』『P5S』などが40%オフ!PS4&スイッチ&3DSでペルソナ25周年記念セールが開催 - Game*Spark 『ペルソナ』シリーズで好きなタイトルは? 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第8話 「初戦」 「ンなーっはっはっはっはァ! ぅワガハイの最高傑作! バイオレント・ブラック・バニー! 略してB3(ビー・キューブ)よ! 今日は最高の成果を期待しておるぞォ!」 「サー、コマンダー」 「……なぁ、神姫のオーナーってのは皆あんなテンションなのか?」 「……私は今まで以上に遼平さんの事が好きになれそうです」 武装が揃ってから更に3日。 ネットで行える簡易バーチャルトレーニングで大体の動き方をマスターした俺とルーシーは、いよいよ初の実戦に参加する事にした。 ……と言ってもそう大げさな話じゃない。 今や武装神姫を扱った店は街のそこかしこにあり、神姫オーナーであればいつでも参加できるシステムを設置している店もあるのだ。 休日なんかにはちょっとした大会が開かれる事も多いようだが、普段行われるのは公式トーナメントやリーグ戦みたいなモノじゃなく、個人同士の草バトルって所だろう。 で、そんな俺たちの初陣の相手が、さっきからハイテンションで大騒ぎしてるオニイチャンってワケだ。 年は俺より少し若いくらいで、なんだかヘンなシミだらけのズボンにベスト、ご丁寧に頭には同じ模様のハチマキをしてる。 「アレはシミではなくて都市迷彩です。 それにハチマキじゃなくてバンダナですよ」 ルーシーが小声で注釈を入れてくるが、俺はそういうのに詳しくないんだって。 ま、そういう事に疎い俺でも分かるくらいにあからさまなファッションの軍隊フェチだった。 「退くな媚びるな省みるな! 敵前逃亡は問答無用で軍法会議! 兵士に命を惜しむ事など許されぬ! そう、お前の前に道はなく、お前の後ろに道が」 「そろそろ選手のご登録をお願いしたいのですが宜しいですか」 「あ、ハイ」 天井知らずに上がりっぱなしのテンションは、店員さんの必要以上に事務的な口調に大人しくなった。 っと、こっちにも来た。 「それでは、こちらにオーナー名と神姫のパーソナルデータ入力をお願いしますね」 キツめな感じの美人さんだけど、さっきと違ってにこやかだ。 どうやら店員さんもアレはやかましいと思ってたらしい。 えーっと、そんじゃ… オーナー名:藤丘 遼平 武装神姫:TYPE DEVIL「STRARF」 ニックネーム:ルーシー と、こんなトコかね。 『それでは両者、スタンバイ!』 さっきの店員さんによるアナウンスが入る。 「ビィィィ!キュウゥブッ! んGoGoGoGoォオゥ!!!」 「サー、コマンダー」 「んじゃ行くか、ルーシー?」 「ハイ。 あなたとなら、何処までも」 ……何処で憶えてくんのかね、そういうセリフ。 崩れたビルの立ち並ぶ廃虚をステージに、バトルはスタートした。 まずは索敵からか。 「相手のバッフェバニーは遠距離戦闘重視の重火器装備型…『ガンナー・ブラスター』です。 早めに接近しないと厄介ですね」 「初陣が真逆のタイプってのは嫌なもんだな」 「負ける気はありません…前方に反応」 緊張した言葉とほぼ同時、ビルとビルの隙間を縫うようにして何かが迫ってくるのが目に入った。 一瞬戸惑った俺が命じるより早く、ルーシーは大きく跳んで回避行動を取っていた。 着弾。 閃光。 爆発。 「…ミサイル?」 「誘導式ではないので、正確にはロケットですよ。 妄想スレ第2段の198さん、ありがとうございました」 「誰?」 「こちらの話です。 …来ますよ」 崩れたビルの残骸を乗り越えて敵が姿を現す。 左肩にはバズーカ砲、ロケットポッドを右肩に。 両手にはそれぞれガトリングガンと大ぶりのコンバットナイフを携え、のっしのっしと歩みを進めてくる……その顔は赤いスコープにガスマスクのせいで表情が読めない。 『ンなーっはっはっはァ! そこな新兵! こそこそ隠れて様子見とは兵士の風上にも置けぬ奴! このB3とワガハイが、フヌケた貴様らに戦場における鉄の掟というモノを叩き込んでくれるわっ!』 あーうるせぇ。 「ドンパチのルールブックにゃ不意打ち上等って書いてあんのか?」 『ムっふっフーン、モノを知らぬ奴め。 この世には『勝てば官軍』というすンばらしい言葉があるのだ! 勝った者にのみ全ての権利が与えられる! 即ちルールを決めるのもまた勝者! つまりすなわち勝利は勝ぁぁぁぁぁっつッ!』 「サー、コマンダー」 ……本格的にワケ分からんなお前ら。 「ま、向こうさんから来てくれたんなら探す手間が省けたな」 「そういう事を言ってる場合ですか」 すいっ、と持ち上げられたガトリングガンが狙いを定める前に、再び跳躍。 弾丸の雨が虚しくビルの壁を穿つのを尻目に、着地したルーシーがこちらに尋ねる。 「どうしましょう?」 「初の実戦なんだし……ここはやりたいようにやってみ」 「……了解」 『むヌぬっ、敵の眼前で作戦会議とは悠長な! 静かにせんかァ! ここは戦場だぞォ!』 相手オーナーの怒声を無視し、前傾姿勢になったルーシーは距離を詰め始めた。 ロケットポッドが迎撃を始めるが、最初の攻撃で誘導式でないと判っている。 最初から当たらない位置のモノは完全無視、被弾する位置にあるモノはサブマシンガンで撃ち落としていく。 その間、視線は相手に固定したまま。 『「なにー!?」』 くそ、向こうと俺の声がカブった。 つかルーシー、お前ちょっとスゴい? 距離が縮む事を嫌ったB3は後退を始めるが、なにしろこっちとは「一歩」の長さが違う。 あれよあれよと言う間に戦闘は至近距離でのそれに移った。 向こうもこの距離ではガトリングガンの取り回しは不可能だと悟り、もう1本コンバットナイフを取り出しての2刀流に切り替えた。 こっちもナイフ2刀流で斬り結ぶ! ……が、ルーシー自身の両手は空いているワケで。 サブアームが相手のナイフを押さえつけている間に、ひょいと掲げたサブマシンガンを相手の顔面に向けてブッ放しやがった。 ががががががっと派手な音がして頭が何度も揺れた後、B3は仰向けにぱったりと倒れた。 『んンNoおぉぉぉおおぉぉうッ!? B3! 応答せよびぃきゅうぅぅぅぅッぶ!』 「ルーシー、お前それちょっとエグい」 「勝てば官軍、負ければ賊軍……勝負の世界は非情なのですよ」 『衛生兵! えーせーへーえぇぇぇぇぇ!!!!』 しれっと言ってのける15センチ足らずのオモチャ。 コイツはやっぱり悪魔かなぁと思って嘆息した俺の視界で、動くものがあった。 「ッ……、」 どごおぉぉんっ! 突然起こった爆発に、俺の口から出かけた言葉が止まった。 スコープとガスマスクがダメージを緩和したのか、大の字になったB3の肩にマウントされたバズーカ砲から煙が昇り、射撃直後を物語る。 そして濛々と爆煙に包まれているのは……ルーシーの頭部付近。 「ルーシーっ!」 背筋の凍るような思いが俺の口を再び動かす。 「返事しろおい!」 「無事です」 冷静な声が響き、風に吹き散らされた爆煙の中からススけたルーシーの顔が見えた。 顔周辺のダメージはそんなものだが、片方のサブアームが手首の辺りから吹き飛んでいる。 どうやらそれを盾にして直撃を防いだらしい。 それを見てもB3は追撃しないし立ち上がらない。 どうやらバズーカは1発きりで、さっき与えた頭部への衝撃はオートバランサーか何かに影響を与えたらしい。 実質、勝負はここで決着ってワケだ。 ほっとした俺、ぽかんとしている相手オーナー、悔しげな表情のB3、無表情のルーシー。 なんだか妙な沈黙の後、ルーシーはおもむろにしゃがみ込んでB3のそばに膝を着くと、残ったサブアームを動かし始めた。 その手に握られているのは、ほとんど使う事もなく無傷に近いアングルブレード。 「はいはいストップストップ、もう終わっただろ。 こっちの勝ち」 俺の言ってる事を聞いているのかいないのか、ルーシーは見せつけるようにブレードを振り翳したまま動かない。 「こら、あんま脅かすなって」 刃に照り返る陽光を受けたB3の顔に、はっきりと恐怖の色が映る。 「ルーシー」 ぐっ、とアームデバイスのシリンダーが動く。 「やめろバカ!」 制止の声と風を一度に裂いたブレードが、鋭い音を立ててコンクリートの床に突き立った。 ……丸く湾曲した刃と床の隙間に、B3の白い首筋が挟まっている。 顔を上げれば、相手オーナーが白いハンカチを必死に振る姿があった。 「ンんバカモノおぉぉっ! 勲章ではなく命ひとつを持ち帰れば良いと教えたはづだろぉがっ!」 「サー、コマンダー」 「試合前と言ってる事が違うんだが……」 「アレがあの人たちの絆の形なのでしょう」 ひしと抱き合う(?)2人を眺めて、にこにこ笑顔のルーシー。 ……ホント、あの氷みたいな目ェしてた奴とは思えんね。 「……ちょっと、興奮しました」 俺の視線に気づいてか、わずかに肩を落とした。 人間で言えば『カッとなった』んだろうが……あんまコイツは怒らせない方がいいかも知れない。 「今、何か失礼な事を考えましたね?」 「いぃえぇメッソーもない」 「怪しいです」 「最愛のパートナーに信じてもらえないとはツラいなぁ」 ちゃかしたセリフに、テレたように小さく微笑む。 「最愛、ですか……嫌わないでくださいね」 「つまんない心配しない」 あっちほど熱烈じゃないが、こっちもちょっとイイ雰囲気。 ひとしきり泣いたり感動したりして気が済んだのか、向こうのオーナーが握手を求めてやってきた。 胸ポケットからはB3が覗いている……ちょっと微笑ましいな。 「いやいやいや諸ォ君! 今回は良い勉強をさせてもらったぞぉ!」 「ま、こっちも楽しかったよ。 ちょっとヒヤっとしたけどな」 「うむ! 記念すべき初陣を勝利で飾れなかったのはヒッジョーォに無念ではあるが、今日この日の戦いはワガハイとB3の輝ける第1歩として生涯この胸に刻もうぞ!」 「お前あんだけ偉そうな事言っといて自分も初心者かコラ」 バカ笑いするミリタリーマニアから視線をそらすと、ルーシーがB3の頬をそっと撫でている所だった。 「さっきは怖がらせてごめんなさい。 貴女の心優しいオーナーに、最大限の感謝を忘れずにね」 「……イエス、マム」 ルーシーの柔らかい微笑みと、風にかき消されそうなB3の声を幕に、俺たちの初陣は終わった。 「ついでにそちらのオーナー。 差し出がましいようですが『バイオレント』は『Violent』で頭文字は『B』ではありません。 その子の為にも早めの改名をお奨めします」 「ンなんとぉーっ!? ワガハイ一生の不覚ぅッ!」 「サー……」 その後、彼の神姫は『バーニング・ブラック・バニー』に改名したとかしないとか……ちゃんちゃん。
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《迷宮壁-ラビリンス・ウォール-/Labylinth Wall》 通常モンスター 星5/地属性/岩石族/攻 0/守3000 フィールドに壁を出現させ、出口のない迷宮をつくる。 関連カード 《ウォール・シャドウ》 《迷宮変化》 《シャドウ・グール》? 収録パック等 BEGINNER S EDITION 1? BE1-JP035 DUELIST LEGACY Volume.1? DL1-041 Pharaoh s Servant -ファラオのしもべ- PS-04 N-Rare